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「堀北くん、高瀬くん。この書類教師の人数分コピーして、職員室に届けてきてくれないかな?」
「わかりました」
「はい。行ってきます」
「あと泉。ちょっとこっち来て」
「はいはーい!なんでっしゃろ?」
「これなんだけど……」
「あーりょーかい。探しとくわ」
「ありがと」
ここは生徒会室。
役員たちは溜まった仕事を消化するために、あっちへ行ったり、こっちへ来たりと大忙し。
それを俺は普段なら会長様が座る椅子に座って見ていた。
「あのぉ、滸先輩。俺もなにか手伝いますよ?」
「いいよいいよ。せっかく今日獅毅いないんだし、部屋に戻ってゆっくりしてて?」
そう言われましても……。
この忙しそうな状況を見てしまったら、帰ろうにも帰れない。
会長様がこの場にいないので、会長補佐としての仕事はやろうと思ってもできない。やることなにもないんだし、俺だって役員の一人なんだから、滸先輩も仕事振ってくれたらいいのに。それこそ書類の整理とか、掃除とかでもいいから。
「みんなが仕事してるのに、俺だけ休むのも……。それに俺だって生徒会の一員だし……ちょっとくらいなにかありません?」
「んー……」
書類片手に空いているほうの手を顎に軽く当てて、宙に視線を投げている滸先輩。なにか考えているみたいだ。
そんな先輩をじっと黙って見つめ続けて、約30秒。滸先輩がちょいちょいと手招きして俺を呼ぶ。それに従い、黒い革の椅子から降りて近づいた。
「だったら美咲くんは、…………ね?」
今は生徒会室に俺たち二人しかいないのに、耳元で内緒話をするようにして告げられた。その内容は俺が予想していた掃除のような雑用ではなく、むしろそれって生徒会の仕事か?っていうものだった。
「あの、でも……」
「“でも”は聞かないよ。ほら、早く仕事してきて」
滸先輩にブラックな笑みを向けられて、仕方なく頷いた。
んー……でもやっぱりいいのかな?俺だけそんな仕事とは到底思えないことで。
と、思いながらも滸先輩の無言の笑顔が怖いので、そそくさと生徒会室をあとにした。
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