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それから近くにあったカフェに場所を移した。
俺の機嫌を取るためなのかはわからないが、このカフェで一番高いケーキと、俺が何気に好きなオレンジジュースを注文してくれた。
頼んだ品が運ばれてくるのを待つ間に、ペットショップでのことを話してくれた。
簡単にまとめると、あの女の人はペットショップの従業員で、獅毅とは子犬の話をしていただけで俺が疑ったようなことはなにもなかったということ。むしろ俺のために話を聞いていたくらいだ。ちなみに二人と一緒にいたゴールデンレトリバーが話していた子犬のお父さん。子どもは全部で六匹。
話はわかった。俺が勘違いをして、勝手に妬いていただけということが。
「……」
しかし。
店員が運んできたケーキにフォークを刺して甘いクリームを頬張りつつも、不機嫌な表情は崩さない意固地な俺。
なぜか。
それは俺の性格のせい。なんですぐに獅毅は悪くないんだよって言って笑えないのか。ほんとにかわいくないよな、俺って。
「まだ怒ってんのか?俺が笑ったことに」
正面でコーヒーを啜る獅毅がそう聞いてきた。
道の真ん中で笑ったことに腹を立てていると思ったらしい。それもこれもいつまで経っても俺が仏頂面だからだ。
「あれは……まあ悪かったと思っている。的外れなことに必死になっているのがかわいくてな」
……もう怒ってなかったんだけど、今の台詞になんかちょっとムカッときた。
むすぅっとした表情のまま、じと目で獅毅を見つめる。
相変わらず涼しい表情だ。なんで獅毅はいっつもこんなんなんだろうな。俺なんか獅毅の行動一つでおろおろしたり、怒ってしまったりするのに。
自分の世界に入り込んで、なにも考えずにケーキをフォークでつんつんと何度もつつく。
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