4377人が本棚に入れています
本棚に追加
■龍虎の場合■
「おーっし!酒持ったかー?」
祢都の声を大にした問いかけに、集まった男たちが「持ったー」やら「まだ持ってない」やら口々に返事をする。
些か元気すぎる男たちに祢都は一瞬苦笑を浮かべ、みんながグラスやジョッキを持つまで律儀に待つ。そして手に手に酒を持った男たちがこちらを見ているのを確認したあと、満足そうに笑む。
「じゃあ、乾杯っ!!」
「「「かんぱーいっ!!」」」
あちらこちらで酒の入った容器がカチンとぶつかる音がする。
それから一気にジョッキの中のビールを干し、泡の髭を作っている者。グラスのなかのシャンパンを優雅に飲む者。酒は二の次で真っ先に食べ物に向かう者。みながわいわいと好き勝手に騒ぎ始める。
ここは龍虎の溜まり場、Lightである。
本日は12月24日。クリスマスイブである。恋人たちの~とはよく言うが、現在ここにいる男たちは全員もれなく独り身。ここにいない男は自分のお相手と楽しい楽しいイブの時間を過ごしているのだろう。
恋人持ちが羨ましくないのか?と聞かれれば、当然羨ましいのだが、ここにいる寂しい男たち、イベント事がすこぶる大好きなのだ。だからこの恋人たちのためにあるような日もノリノリで楽しんでいる。
どれだけこの日を楽しみにしていたかは数日前に遡る。
.
最初のコメントを投稿しよう!