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エレベーターが最上階に着いたことを知らせる音が鳴ってドアが開く。それにハッとして壁から背中を離し、再びドアが閉じてしまう前にエレベーターを降りて部屋に向かう。
俺の部屋は向かって右側の二つの扉のうちの手前のほうだ。
もうすぐで部屋だというのに遠く感じるのは俺が疲れているからか。
カードキーで鍵を開け、玄関扉を開ける。
「?」
一歩玄関に足を踏み入れた瞬間に俺のではない靴があることに気づく。俺のサイズより小さいその靴は見覚えがありすぎるものであって。
「美咲?美咲いるのか?」
急いで靴を脱ぎ、早足でリビングに続く廊下を歩いた。
早く美咲に会いたい。顔が見たい。声が聞きたい。という一心で廊下とリビングを仕切るドアを開けた。途端、ふわりといい匂いが鼻を擽る。
「美咲?」
リビングと繋がるようになっているダイニングに歩いていけば、キッチンに人がいるのが見えた。
俺の声に反応して碧い目が俺を見る。それから小さな口が笑みの形になった。
「おかえり。獅毅」
鈴の音のような凛と澄んだ響きの声が俺を呼んだ。
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