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ともかく僕は自力で問題を解決しなければいけないらしかった。それも十五分以内に解決しなければならない。そうでなければ業務に支障が出ると頭の中の店舗の理想型が警告している。
でも、なんだか自分が間違ったようなことをしたときのような気分になっていた。祝日の日に学校に登校したみたいに。
今日は何かの祝日で『株式会社回転コーポレーション』はお休みなのだろうか。可能性としてはある。でも、『株式会社回転コーポレーション』は年中無休のはずだ。急に方針を変えたことが僕だけに知らされなかったのか。それとも気づかなかったのか。
なんでもいいか。僕はまず二人の部下に電話をかけることにした。
デスクの上のファックス機能付き電話の受話器をとってから、もしこの電話がどこにも繋がらなかったらたらどうしようかという不安がよぎった。電話族は僕の通話などは繋がないと固く決意しているかもしれない。
“杞憂”
腕時計がつぶやいた。彼にしては珍しく余計な一言がなかった。そしてさらに珍しいことに、その一言には同意ができた。《電話族》なんだそれは?
結局、二人の部下にも九時入りのアルバイトの子たちにも電話は繋がった。彼らは全員で八人になる。電話回線は確実に八人の携帯電話につながり、彼らの携帯電話の着信音を鳴らせることに成功したみたいだ。僕は受話器からそれぞれの携帯電話が奏でる呼び出し音を聞いた。二人の部下や大学生の呼び出し音はそっけないいつもの電子音だったが、高校生の呼び出し音は僕のよく知らない音楽で三十秒ほどは聞くことができた。
そのようにして僕は杞憂を回避し、八人全員の携帯電話に伝言を残すことに成功した。
僕の不安は解消され、電話は繋がった。誰も電話に出なかっただけで、ちゃんと留守番電話に伝言を残すことに成功したのだ。
「この電話は電源が(中略)ピーと鳴りましたら、ご用件をお話ください」
満腹だった。しばらくは誰にも留守番電話なんか入れたくない。おそらく彼らは何らかの理由で僕のことを皆で無視することにきめたのだ。そうにちがいない。
さて、どうしようか。本部に連絡を取らなくてはならない。連絡して指示を仰ごう。僕には他にするべきことが思いつけなかった。
でももし、本部も留守番電話になったらどうしよう。と僕は思った。そして、不安は的中した。
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