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僕は立ち上がると窓辺に据えつけたグレーのラックに近づいて、オーディオの再生ボタンをオフにした。 窓の外は暗く、窓に面した通りには街頭の白い薄明かりがその辺に落ちている。 僕はグレーのベッドのグレーの羽毛布団を脇に追いやってうつ伏せに寝転んだ。 今日で誰とも連絡が取れなくなった日から三日と半日(正確には三日と14時間30分33秒)が過ぎている。僕はあの日の朝(小鳥が機械だとか考えてステックパンとチョコチップ入りのスティックパンを食べた日)から今日まで誰にも会わなかった。留守番電話やカズカズコのCDみたいにセットされた音声以外は人の声さえ聞いていなかった。姿だって影だって見てはいない。 あのあと僕は店を正常に機能させるべくできうる限りの行動をしたんだ。本部と連絡が取れないことがわかってから、始めに本部の数値係から毎朝送られてくる配送関係のメールが届いているかを確認した。このメールは本部から各店舗に毎朝送られるもので、数値係のほうで各店舗の店長の意見と統計によって判断され店舗ごとにその日一日に必要な材料や備品の詳細が送られてくるのだ。『株式会社回転コーポレーション』は回転寿司チェーンなので米や酢、各種調味料、鯛やヒラメやらマグロ、トイレットペーパーや洗剤にいたるまでその日に消費されるもののリストになる。
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