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一時(通過点)を過ぎても客は一人も来なかった。一組の家族も来なければ車が駐車場に停車することさえなかった。 ホッとしていいように思われた。一人でも客が来たら謝罪を繰り返して店を閉めなければならない状況で客が来ないのはホッとしてもいいんじゃないのか?僕は頭の中で誰かに同意を求めたけど誰も応えなかった。物たちは沈黙していた。事務的な携帯電話の時刻表も、断定的で屁理屈たれの腕時計も、シニカルなストップウォッチも誰も何も話さなかった。 しかたがなかったので僕はただ事実を受け入れることにした。来るべき時間に兵士は現れず、通信は死んでいた。さらには来るべき敵の大群もなかった。予定されていた戦争は起こらずノルマンディもイラクも静かで平和だ。戦争が起こらないにこしたことはない。 それから僕は家に帰った。金庫に鍵をかけ、セキュリティをオンにして扉を施錠した。鍵をかけてから鍵がかかっていることも確認した。 アパートに帰ってから僕は寝た。まだ太陽が空にはあったけど翌日の朝まで僕は目を覚まさなかった。 次の日(今日からしたら昨日になる)も初日と同じように過ぎた。眼が冷めた僕はスティックパンを食べて出勤して昼には帰った。相変わらず客は来なかったし、誰に連絡しても繋がらなかった。この日も昼にアパートでスティックパンを食べると今日の朝まで寝てしまった。ひどく眠かったのだ。眠気は初日と翌日の昼にスティックパンを食べたあとに必ず僕の元を訪れた。まだ昼だというのにベッドに入ると、まるでテレビゲームによくあるモンスターを眠らせる呪文をかけられたみたいに寝た。 いーひっひっひっひっひ。
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