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三日目の今日はそれまでとは幾分違っている。というのも、今日は休日なのだ。月に二回あれば幸運といえる休日だ。出勤表にもきちんと記述されている。だから定時に眼が覚めなかった。十二時十二分(正確に12時12分5秒)に眼が覚めた僕はスティックパンを食べると私服に着替えた。濃いグレーのパーカーの形に編まれたセーターの上にコットン素材の明るいグレーのダブルのジャケットを羽織って、黒い綿パンを穿いてくすんだ黄色をしたブーツを履いて出かけた。 アパートの専用駐車場に止めてある藍色の軽自動車に乗り、エンジンをかけてカーナビに目的地を○○府にある『株式会社回転コーポレーション』の本社に設定した。予定到着時間は十四時四十五分です。とカーナビが教えてくれた。それからふと思い返してアパートの自室に戻りその辺にほうっていたカズカズコのCDを持ち出し車にはめ込んであるCDプレイヤーに挿入した。 「メルアド教えてくださいよ」 いつだったか忘れたけどこのCDを貸してくれた高校生のアルバイトの女の子が言ったので、名刺(そこにはビジネス上必要な個人情報が記されていて携帯電話のメールアドレスも書き込まれていた)を渡したら女の子が妙におとなしくなったのを思い出した。  そうして今日の昼ごろの僕は車を発進させた。車内にはカズカズコの歌が流された。 <今日 明日 明後日 明々後日 ヤノ明後日はやってくる ずんずか ずかずん ずんずん ずかずかずん> 妙な歌だ。僕は運転とカズカズコの歌にだけ集中した。スムーズな発進と無理のない停車そして周囲の状況を把握するよう努めた。 だろう運転は模範的な運転方法だ。そうだろ?僕は問いかけた。 “かもしれない運転の間違いだ。どうでもいいがそろそろネジを巻いてくれないか。私はもうすぐ止まってしまう”
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