17/17
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
僕は眼が覚めてしまった。というのも平和だった夢の世界に突然警報が鳴り響いて、青かった空は急に夕暮れになってしまったからだ。ふと気がつくと僕は一人で周りの子たちはいなくなっていた。警報がピンポーン、ピンポーンと鳴り響いている。早く家に帰らないといけないのに帰り道がよくわからずにいた。僕は闇雲に外に飛び出す。道に迷っていると他人の家から夕飯の匂いが漂ってきて僕は泣いてしまった。僕が泣いている間にも夜は確実に赤を塗りつぶしていて、警報はやまなかった。完全に夜になってしまう前の水族館の中のような薄暗い蒼が目の前に広がったときに僕は夢の世界から現実に戻ったんだ。 現実の世界では誰かがインターホンを鳴らしていた。それも連続で、うん。連射、連打。ピンポーンという音が止む前の《ピ》と《ピン》の段階で次の音が鳴るくらいの連打だ。 誰かは知らないけど、こんな夜中にこんな鳴らし方をするのは非常識だ。 僕は枕を三回殴ってから気持ちを落ち着かせた。それから冷蔵庫を開いてコーヒー牛乳を飲んだ。口の中の液体を無意味に噛む。この間にも音は止まなかった。それどころかより激しくなっている。このインターホンを鳴らしている誰かはいったどこでどんな教育を受けたんだろうか。 ……誰かは?
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!