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あまりにもひどい食生活だの云々言われて不機嫌だ。僕が何を食べていようと君には関係ないので放って置いてほしいと思ったけど彼女はまだチェーンソウのエンジンを切っていなかったので反論しなかった。彼女は僕の冷蔵庫を見て意見をたれている訳で、僕はベッドに腰掛けていた。一般的に考えて安心できる環境とはいえない。できれば特殊部隊に突入してほしかったけど腕時計によれば国家のシステムは動いていないということなので期待はできないだろう。 女は冷蔵庫の扉を閉めて僕の前に立った。チェーンソウのエンジン音。 「夕飯を食べていないようですね」彼女はエンジンを切った。「私どもとしても貴方に説明しなければならないことは残り時間に差し障るほどあるのですが、まずはまともな食事をされてはどうでしょう」どうして晩飯を摂っていない事がわかるのかと訊いたら、彼女はゴミ箱を見れば大体のことはわかると答えた。僕がスティックパンばかり食べていてコーヒー牛乳が好きなこともお見通しだった。 「少し時間をください」彼女は自分が空けた穴から隣の山口の部屋に入っていった。 おそらくたぶん、彼女は食材を探しに行ったのだろう。僕の冷蔵庫にはコーヒー牛乳と冷凍うどん一玉しか入っていなかったからだ。女が僕を非難していたのもそのためだった。 逃げようかと思ったけど止めた。隣の部屋から再びチェーンソウが物を切る音が聞こえてきたからだ。壁にできた穴から覗いてみると彼女は山口の部屋の壁を切り裂いているところだった。山口のお隣は谷田とかいう名前のOL風の女性だったと思う。
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