第十二章

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「…ごめんなさい。 私…圭介にずっと嘘ついてた…裏切って…」 フワッと香る圭介の香水。 その力強い腕、温もりに堪えていた涙が頬を伝った。 「正直戸惑ったんだ。田宮さんに聞いてからも会いに行くか迷ってた。 会って何を言えば言いのかって…」 私を抱く手に力が入るのが分かった。 そして小さく震えていることも。 「田宮さんに聞かれたんだ。'里沙を好きになった理由は?'って」 それは私も聞かれた言葉。 私は何故か答えれなかった。 「俺沢山あるはずなのにぴったりな言葉が出てこなかったんだ。」 圭介も? 驚いて顔を上げると彼は笑っていた。 「里沙と過ごす内にそんなの関係なくなったんだよ。 理由なんていらない。 どんな里沙でも俺は好きだ」 …私だってそうだ。 圭介が圭介でいるかぎり私はあなたが好き。
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