第十二章

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「田宮さん言ったんだ。人は好きになるのには理由があるって。 綺麗だからとか美味しいからとか。 でもそんな理由がなくなった時に好きは愛に変わるんじゃないかって」 「…好きから愛に?」 圭介は頷くと私の目を見つめた。 「俺、里沙に会いたかった。 ずっとずっと…遅くなってごめんな?」 私は首を振る。 遅くなんかない。 こぅして来てくれたんだから。 「これまたつけてくれる?」 圭介はポケットからアクセを出す。 それは店長に預けたアクセたち。 圭介は指輪を取り私の薬指に通した。 それは涙で歪んだけれどとても綺麗で…綺麗で…溢れてくる涙を止めることなんてできなくて私は彼の胸の中で泣き続けた。 「良かったら聞かせて?俺が知らない里沙のこと」 「…長くなるよ?」 「いいよ。これからずっと一緒なんだから。少しずつ話して」 …ずっと一緒。 そうだね。 上手く話せるか分からないけれど聞いてくれる?。 それは長い長い物語。 あの街で出逢った人たちのこと。 私が歩いてきた物語のこと。 そしてあなたへの想いを。
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