第二章

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その猫は初めて見る私に少し警戒しているようだった。 しかし彼が餌を置くと必死になって食べ始めた。 「ミルクって言うんだ。いつの間にか住み着いちゃってね」 「可愛いですね」 「動物好き?」 彼の言葉に頷きミルクの頭を撫でる。 ミルクは一瞬体をびくつかせたが残り少なくなった餌を食べ続けた。 「店の女の子達もね、動物好きな子多いよ。 生まれ変わったら犬か猫になりたいって言ってる子達もいるんだ。 可笑しいだろ?」 「その気持ち分かる。 私もそう思うから… 人間は疲れるもん」 「何だか悲しいね」 彼は本当に悲しそうに微笑んだ。 だってそうじゃん。 毎日同じ事の繰り返しで面倒くさいことばかりだ。 それは歳を重ねれば重ねるほど増して行っている気がする。 ミルクはお皿をなめ終わると路地裏に消えて行った。
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