壱拾参

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男「ハァ…ハァ…ハァ…。」 肩で息をする男。立っているのは男と母だけ。 母「ハァ……ハ!」 ―ギン、ズシャッ 母が倒れた。女の子は泣き叫びたい思いをこらえて涙を流す。 男はフラフラとした足取りで女の子のいる押し入れへ向かう。 男「何故だ!?」 そう叫んだ男は押し入れに手をかけたのにも関わらず、急いで部屋を出ようとする。 男「グァ!」 ―ドガッ 倒れた勢いで女の子の隠れている押し入れにぶつかり、戸が開かなくなる。 ?「バカね…。」 嘲笑うような声。パチパチと木が燃える音と交わる。 ?「今日から私が神主。この部屋が燃えたら消しましょう。 あ、可哀想だから油をかけて燃やしてあげましょう。」 女の子は男の重さで開かない戸から両親の姿を見る。 油をかけられた両親。血の臭い。 両親の焼ける臭い。 ―ガダッ 戸が揺れてしまった。 ?「あら。そこに何かいるわ。」 燃える部屋の中をまっすぐと歩き近付く。
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