参拾九

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『三刻経ちました、お身体をお拭きします。』 ゆっくりと湯船から出る桜華。身体の感覚が戻っては消え戻っては消えの繰り返しで疲れ切っていた。 手拭いで身体を拭かれる桜華。髪は2人で念入りに綺麗にしている。 『お着替えを。』 1人が桜華の服を持ってきた。されるがままの桜華は若宮壱琉へと姿を変えてゆく。 「髪紐はどうなさいますか?」 髪担当の忍が聞く。 服装は決まっているが髪紐は決まってないらしい。 「どちらになさいますか?」 1つは桜華が使っている鈴の付いた髪紐。もう1つは同じ髪紐だが真新しく鈴が大きい。 桜華「何時ものヤツ。」 そう言うと忍は桜華の左側に来るように髪を綺麗に結い、先よりに縛った。 「外させていただきます。」 髪担当のもう1人の忍はそう言って眼帯を外す。 『私達は同行される方に準備がもうすぐで終わると言って参ります。』 髪担当の忍は風呂場から居なくなり、3人がかりで着物の着付けをする。 上質で薄い着物は肌触りが良く、暑いが普段の着物とは違い涼しくもある。 『辻風様、お支度が終わりました。』 スッと戸を開けた辻風は膝を着き、頭を下げる。他の忍も辻風同様頭を下げる。 『報告します。壱琉様に同行なさる方は玄関にて待っております。』 桜華「分かりました。辻風、念の為に百合を屯所に待機をさせて下さい。」 辻風「御意。」 女忍と辻風は消え、戸の前に待機していた忍びを連れて玄関へ向かう桜華。 ―リン 鈴の高い音が響く。 全員玄関に居るのだろうか人が居ない。 ―リン、リン
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