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「──それっ」
掛け声と共に立てた人差し指を、ナツは空に向かって振った。
すると。
描くように、空を架ける大きな虹が現れた。
鮮やかな七色が、広がる青に彩りを添えている。
『こんな目立つ魔法使っていいのか?』
さすがに呆れた声音で尋ねる葵に、
「いいのっ」
たいして気にしていない風に嬉しそうにナツが返した。
確かに雨も降っていないのに、こんな見事な虹が出たというのはちょっとしたニュースものだ。
少なくとも、今日はこの出来事で持ち切りになるだろう。
だが。
「たまにはいいでしょ、こんな魔法も」
満足そうに頷くナツに、葵もしばし逡巡してから短く、
『そうだな』
と、答えたのだった。
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