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葵の答えを受けてから、ナツは眩しそうに目を細めて自らが作り出した虹を見つめた。
──この虹みたいに、素敵な夏になればいいな。
そんな風に思っていると、学校のチャイムが鳴り響いた。
その音で我に返ったナツは悲鳴を上げた。慌てて腕時計を覗き込んだ彼女は、愕然としたように言う。
「部活……!」
おろおろと落ち着きないナツを横目に、葵は冷ややかな口調で打開策を言い渡す。
『だったら、早く部活に行けばいいんじゃないか?』
あまりにも当たり前な解答を聞いて少し冷静になったナツは、ケースを手に取ってから葵へと振り返った。
「じゃあ、いってくるね!」
手を振りながら、ナツは慌ただしく屋上を後にした。
そんなナツを見送ってから、葵は深々と溜息をつきながらぼやいた。
『まったく』
しかし、そう言いながらも葵は僅かに笑ってナツの作り出した虹を見ていたのだった。
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