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「葵……?」
確認するかのように発した言葉は、誰かの名前のようだった。それは闇へと溶けるように消えていった。
しばらく経ってから、どこからともなく声の高い少年の笑い声が少女の耳朶に響いてきた。
『おかえり』
その声を聞いて、少女は嬉しそうに頷いた。
「うん。ただいま」
少女はただ向日葵を見つめながら、話をしていく。
『取りあえず。今年も最初にやるんだろ?』
少年の声は、少女を促すようにも聞こえる。向日葵から聞こえてくる声を当たり前のように受け止めて、少女は向日葵に跨がった。
「じゃあ、行きますか」
『振り落とされるなよ~?』
からかうような物言いに、少女は苦笑してから向日葵を小突く。いってえ、という声を無視して、少女は片足で地面を軽く蹴った。
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