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すると、向日葵に跨がった少女は重力に反して空中をふわふわと浮かんでいた。そのまま危なげなく上昇を続け、地面から遠く離れると少女は力強く首を縦に振った。
「葵」
『分かってるよ』
向日葵の茎を握り直すと、それはぐんと加速して夜の空を翔けていった。
この感じがとても懐かしい。
身体中を打っていくような風の感覚が。
乱れる髪の流れが。
眼下に広がる町の明かりが。
一年しか離れていないというのに。
--始まった。今年も、また。
込み上げてくる興奮に、少女は思わず口元をほころばす。
そして、茎をぎゅっと握りしめた。
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