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「やっぱり空を飛ぶのって気持ち良いなあ」
うんうんとしきりに納得しながら少女は頷く。その台詞に少年の声は、やや呆れたような声音で返す。
『やっぱり、ってお前なあ……。仮にも魔女が言うか普通?』
少女は決まりが悪そうに頬を掻く。
「仕方ないじゃない。私は魔女と言っても“期間限定”の魔女なんだから」
場を改めるようにひとつ息をつくと、少女は閃いたようにいたずらっぽく微笑んだ。
「ねえ、葵。ちょっと涼みに行かない?」
『涼み?』
「そう、涼み」
そして少女は明確な答えを提示しないまま、もう一度向日葵の茎を握り直して進行方向をおもむろに変えた。その方向とは、先程とは逆で真下つまり急降下だ。
そして、その先には海が広がっている。
それにも構わず、少女は急降下を続ける。
少女の真意が分からない向日葵は内心うろたえているが、黙って導かれるがままになっている。
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