第二章*幕末を生きた男達

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あまり顔は動かさず目で自分の首元を見る。 見てみれば妖しげに光るもの… …刃物?! 「…!!なっ?!「叫ぶなや…」 ─後ろから低い声がした。 ゾクッとする程低くて、逃げたくても脚が言うことを聞かない。 何がどうなってるのかわからない。 私は息を呑んだ。 「オマエ…何処の忍や…」 男は冷たく低い声で問う。 私…殺されるの…? "しのび"ってなに…? 頭の中で男の言葉が回る 「…ほぉ~…俺様が聞いとんのに答えんつもりか?…答えんのやったら…」 男は私の首元にある刃物をグッと押し当て少し横にずらす。 「…っぅ"!!」 首元に鈍い痛みがはしる。 「なんやこれだけで痛いんか?…皮一枚切れただけやで?」 恋歌の声を聞いて妖しげにククッと笑う男。 ─殺される─ そう思った瞬間、私の身体はカタカタと大きく震えだした。 恐怖のあまり頭の中は真っ白になる。 怖い…怖いよ!! 思い浮かぶのは航の顔。 「っ!」 …ダメ…まだ死ねないよ…! もう一度だけ…航に会いたい!! しかし逃げようとしても身体に力が入らなかった。 言うことを聞かない身体にムチを打ち、必死に動かす。 「なっ?!!」 男はいきなり抵抗し出すと思わなかったのだろう。一瞬だけだが力が緩み、隙ができる。 その一瞬を見逃さず私は男の腕から逃れ走り出した。 まさか抵抗され、その上逃げられるなんて思っても見なかった男は数秒ポカーンとしていた様に見えた。 「フ…フフフフ」 ─必死に逃げる恋歌の後ろ姿を見て、男は不気味に笑いだした。 「アカン…女や思て油断してもうた…せやけど…この天才監察方・山崎 烝様から逃げられると思ったら大間違いやで?」 男はそういうとフッと弾かれたように消えた─
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