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ひとつ吹く度に、舞い散って。
ひらひら、
落ちても、舞い上がって。
ああ、なんもかも。
見えんようなる。
久し振りに触れた肌からは、はじめ少し違う匂いがした。
余所余所しい。でも、多分それが今はこいつにとっての「いつもの匂い」なんだろうと感じた。
そうなってもーたんやな。
もう色々、ちゃうんやろな。
それでも身体がつながれば、違和感は少し薄れた。
えらいもんで。
エエとこもアカンとこも変わってへんし、汗掻いたら少しいつものこいつの匂いがした。
俺は、ぎゅっと後ろからシーツに押し潰すように抱きしめて、鼻先を髪にうずめた。
「ふじ、わ、…」
「おん」
「くるし・あっ…あ、ふじ、」
「おん」
顔をうずめた髪の中に、
俺の知らんシャンプーだか何だかの匂いの中に、
(ちょっとでもせえへんか)
(あ 今した)
バレへんように。
祈るような気持ちで、
俺の知ってるこいつの匂いを探し続けた。
目を閉じると、互いの息遣いとシーツのシャリシャリ。
そして、それをかき消しそうな窓の外の風。
ごう、と強く吹くたびに窓枠がガタガタと震える。
(…ああ、)
散ってまうな。
ほんまの最後やな。
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