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「まぁしゃあないわな」
藤原が独り言のように呟く。
「何が」と尋ねると、返事が返ってくると思わなかったのか、少し視線を泳がせた。
「…や、わからへんけど」
「何やそれ」
怠い体を無理矢理起こし、ベッドから抜け出る。
時計をちら、と見る。何だかんだ一時間くらいは寝たか。
さっき藤原が言ったようにまだ仕事に出るまでは時間がある。俺は、勝手に風呂場に向かった。
頭をわしわしと洗っていると、内腿にトロ、と何か伝うような感触。
ぎくりとして見ると、白いものが内股を流れていた。
藤原が俺の中に吐き出した、体液。
手持ちのゴムが尽きて、そのままでええよ、と俺が生でさせた。
藤原は一瞬戸惑っていた。病気を持ってないことはもう互いに知っている。それでも、生で、中で出すことにためらいを感じているのがわかった。
真面目やし、女とは絶対中で出さへんのやろなあ。
「妊娠せえへんから」
笑いながらそう言った時、あいつは一緒になって笑うどころか、何だかムッとした表情で俺を見た。
俺の中で果てる瞬間、いつもより強く、包み込むように抱きしめてきた藤原の逞しい腕。
愛おしかった。
あのデカい体が俺の上で、中で、動く度にぎゅっと幸福感に襲われた。
ずっと、繋がっていたいと思った。
だらだらと、俺の腿を伝って流れていく藤原の欠片。
ふと淋しくなる。
全部、残っとったらええのに。
俺の中に。
体も、本当は気持ちまで。
全部ほしい、
そう思った。
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