確信犯 10

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「まぁしゃあないわな」 藤原が独り言のように呟く。 「何が」と尋ねると、返事が返ってくると思わなかったのか、少し視線を泳がせた。 「…や、わからへんけど」 「何やそれ」 怠い体を無理矢理起こし、ベッドから抜け出る。 時計をちら、と見る。何だかんだ一時間くらいは寝たか。 さっき藤原が言ったようにまだ仕事に出るまでは時間がある。俺は、勝手に風呂場に向かった。 頭をわしわしと洗っていると、内腿にトロ、と何か伝うような感触。 ぎくりとして見ると、白いものが内股を流れていた。 藤原が俺の中に吐き出した、体液。 手持ちのゴムが尽きて、そのままでええよ、と俺が生でさせた。 藤原は一瞬戸惑っていた。病気を持ってないことはもう互いに知っている。それでも、生で、中で出すことにためらいを感じているのがわかった。 真面目やし、女とは絶対中で出さへんのやろなあ。 「妊娠せえへんから」 笑いながらそう言った時、あいつは一緒になって笑うどころか、何だかムッとした表情で俺を見た。 俺の中で果てる瞬間、いつもより強く、包み込むように抱きしめてきた藤原の逞しい腕。 愛おしかった。 あのデカい体が俺の上で、中で、動く度にぎゅっと幸福感に襲われた。 ずっと、繋がっていたいと思った。 だらだらと、俺の腿を伝って流れていく藤原の欠片。 ふと淋しくなる。 全部、残っとったらええのに。 俺の中に。 体も、本当は気持ちまで。 全部ほしい、 そう思った。
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