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「今日、来るか?」
数日後。
楽屋で、誰もいないのを確認して藤原が尋ねてきた。
「おお。あ、でも一回帰るわ」
「おん。じゃ迎えに行く」
「ええよ別に。ほんならうち来た方がええやんか」
「それもそうやな」
椅子に腰掛けて笑っている藤原を、傍らに立って見下ろす。
藤原が、俺をぼんやりと見つめながら、そっと太股に手を伸ばしてきた。
何かと思い身構えると、そのまま、撫でるように俺の腿から腰に手を滑らせる。
「!」
デニム越しとはいえ、その手の感触にどきりと心臓が跳ねる。
俺の体を撫でながら依然ぼんやりと何も考えていないような表情の藤原に、慌てて言う。
「ちょ、何してんねん」
「え?…あぁ無意識やった」
きょとんと言う藤原。
頬が熱くなる。
「~…!!お前、アホちゃう?誰が入ってくるかわからんのに」
「ほんまやな。怖ぁ」
「怖ぁちゃうわ!!」
「悪かったて」
ぱん、と俺の腰をはたいて、藤原が立ち上がる。
俺は赤くなった顔を見られないよう、藤原に背を向けた。
かちかちと携帯を弄り始める藤原を背後に感じながら。
上がった心拍数は、いつまでも静まらなかった。
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