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浜田さんとは、二度寝たことがある。
藤原への気持ちを自覚し始めた頃、外で発散する術も知らずただ荒れていた俺にいち早く気づいてくれたのが浜田さんだった。
その原因が藤原だということも、抱えた気持ちを一時的にでも解放する方法も、浜田さんにはお見通しだった。
半ば強引に、ベッドに引き込まれて。
それでも俺は、臨界点に達しかけていた気持ちをどうしたらいいのかわからず、その手に縋るしかなかった。
「こうやって、散らしてくしかないねん」
浜田さんは、そう教えてくれた。
持って行き場のない気持ちに真っ向から向き合えば、自分が壊れる、と。
「どうにもならんこともある」
そう小さく呟いた浜田さんを見て、それは体験談だろうか、と思ったが聞くのはやめた。
その後、どちらからともなくもう一回だけ寝たが、それ以降関係を続けることはなかった。
俺は、藤原に似た奴を探すことで発散することを覚え、もう浜田さんとどうこうなることはないだろうと思っていた。
現に、その後も収録で一緒になったり何度も遊んで貰ったりもしたが、今まで通り先輩後輩の間柄で。
けれど。
何となく、この突然の来訪には違うものを感じた。
最初に浜田さんと寝たときの、あのときの雰囲気を思い出した。
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