他人の定義

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「ん」 差し出されたペットボトルの水を受け取る。 "終わった"あとに力の入らない俺に水を手渡すのは、いつの間にか決まったこいつの仕事。 ご丁寧に、蓋まで開けて。 それを何口か一気に飲みぼんやりしていると、藤原が隣に座り携帯を弄り出す。 慣れた手つきで操作するiphone。 画面が見えないように少しズレて座り直すと、藤原が空いた距離を埋めるように寄ってくる。 こいつが誰にメールしとんのか、ツイッターか、ブログかなんて知りたない。 煙草に手を伸ばす。 触れた太股に、自然に手を置く藤原。 煙草の煙を吐き出しながらも、その手が触れている部分に意識が集中する。 「手を置かれている」 そう思う。 自然だけど、人の手。自分じゃない。 俺たちは、他人や。 その事に、ホッとする。 他人の手だから、置かれていることに安心して。 距離があるから、埋めたくて求める。 溶けて一つになれたらいいなんて、死んでも思わへん。 藤原が携帯を見て、ふふっ、と笑った。 「重、めっちゃオモロい。あいつアホやな」 「そうやな」 俺は、お前の恋人でいたい。 おわり。
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