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一拍置いて、一気に汗が出た。
俺、
いま、
何を、
(ええ~~~っ!!!???)
ないだろ、ないない。
何この突然の告白。
どう考えても「今」じゃねぇじゃん!!超間違えた!!
慌てている俺に、電話の向こうから低い声が尋ねる。
『…聞き間違い?』
「はいっ?」
『いや、俺の…聞き間違い?』
「…」
心臓が痛い。
携帯を握った手が汗でぬるぬるしてきた。
『好きです、て、聞こえたんやけど』
「…」
『もしもし?』
「…」
『あれっ?何やこれ…もしもし?もしもーし』
「…はい」
一瞬、電波のせいにして切ろうかと思った自分に喝を入れる。
気合い入れろ、俺!!
すう、
息を吸い込んで、腹に力を入れる。
なるべくゆっくりと、一語一語噛みしめるように、言った。
「聞き間違いじゃないです。言いました。
俺、藤原さんのことが好きです」
痛い痛い。
心臓が。
汗びっしょりな手は、何故か冷たい。
早くなんか言ってくれよ。
もう、振るんでもいいから、何か。
あと10秒でも沈黙が続いたら耐えられない。
そう思ったとき、電話の向こうで、がさがさ、と荒っぽく動く音。
ばさっ、
チャリ、
ガタガタ、
『若林、今から会える?』
「え?」
『幡ヶ谷やんな。20…15分待っといて。ほな!!電話する!!』
ぷつ、
ツー、ツー、
矢継ぎ早でまくし立て、電話は切られた。
俺は、通話終了した携帯を耳に当てたまま、部屋で一人正座していた。
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