動詞のジャンクション 21

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同じクラスになって。 お互い違うタイプだったのに、ある日を境に急速に仲良くなった。 ぐいぐい距離を縮めてくるあいつに面食らいながらも、自分の中の堅く閉じたはずの扉が開いていく、そんな奇妙な感覚を楽しんでいる俺が居た。 そしていつしか、あいつに対して特別な感情を抱くようになっていた。 けれど、それに先に気付いたのは当の俺ではなく、あいつで。 「お前、俺のこと好きやろ」 おん、好きやで? 自覚のなかった俺は、突然のあいつの質問にケロリと答えた。 今も忘れない。 あいつの傷ついたような表情。 好きやって言うたのに。 何でそない泣きそうな顔すんねん。 俺は、とことん鈍感で。 あの頃のあいつの気持ちには何一つ気付いてやれなかった。 気付こうともしなかった。
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