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夏が過ぎて、
秋が過ぎて、
冬になった。
あいつに対する感情を、恋愛だと気付けないまま、時間だけが過ぎていた。
寒い日の帰り道。
薄着のくせに寒い寒いと騒ぐ井本に、巻いていたマフラーを放り投げる。
急に大人しくなる井本。
黙って俺のマフラーを巻く姿を見て、何とも言えない気持ちが胸の中に充満する。
(…何なんやろ)
何でこんな変な気分になんねやろ。
井本の赤くなった鼻先を見ていると、何だか答えが出そうな気がした。
(…俺、もしかして)
マフラーに顔を埋め黙りこくっていた井本が、ぽつりと尋ねてきた。
いつかと同じ、質問だった。
「…お前、俺のこと好きやろ」
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