動詞のジャンクション 21

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煙草の煙を吐き出す。 窓から吹き込んだ風で、一瞬で掻き消える。 俺は煙草をくわえたまま、缶ビールを片手にベランダに出た。 (もう、ビールやと寒いな) ひんやりとした風。 まだ冬と呼ぶには早いけれど、あの日の感覚を呼び起こすには充分だった。 (…時間が解決するって、嘘やな) ぼんやり思う。 こんなに永い時間が経って、取り巻く状況も何もかも変わったのに。 本当に忘れられないでいる。 「一生忘れない」と、あの日思った井本の顔が。 ぺき。 空になったビールの缶を弄びながら、暫く考えた。 携帯を取り出す。 迷ったが、発信した。 ――もし。 ――もしも、この電話が繋がったら。 期待を込めて携帯電話を耳に当てる。 流れてきたアナウンスに、少し笑う。 『おかけになった番号は――』 「…はは、」 そらそうやんな。 わかっていた結末。 俺はどうすることもできず、ただ無機質なアナウンスを聞き続けた。 【第二十一話・過ぎる】
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