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猿みてーなもんだ。
覚えたての快感をむさぼる俺達は、もはや人間じゃない。
何年もくすぶっていた分、余計なのだろう。
求めて、求められて。
鎮火しては燃えて。
終わりがない欲求。
微かに聞こえる鳥の声にハッとして、窓に目を遣る。
白みかけた空。顔を見合わせて笑う。
その、互いの笑顔を見て。
また笑う。
【第二十二話・色惚ける】
「腹減った…」
布団の上で、丸まりながら力無く若林が呟く。
俺も、と答える前に腹がきゅるきゅると音を立てた。
「なにか買ってくる」
「え」
「マックとかでいいだろ」
立ち上がりかけた俺の腕を若林が慌てて掴む。
「俺も行く」
ああ、何だろうな。
可愛い顔してるな。
「?何ジロジロ」
「可愛いなって」
「はあ?」
気持ち悪り。
そう笑いながらも、言葉とは裏腹に唇を寄せてくる若林。
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