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その後、俺たちは。
ゆっくりゆっくり、やたらと時間をかけて駅まで歩いた。
若林は一言も喋らず、俯きがちな横顔からは暗い雰囲気だけが伝わってきた。
俺は申し訳なさもあって何も言えずにいたが、次第に無言にも慣れてしまいぼんやりと別のことを考え始めたりしていた。
“マジかよ”
別れ際の、押しつぶした様な若林の呟き。
すっかり別のことを考えていた俺は、それが一瞬何に対する発言かわからず、はい?と聞き返した。
若林は目を丸くしたあと、鬼のような形相で睨んできた。
無神経野郎。
そう言いたげな怨めしい表情。
「マジかよ」が何に対する呟きだったかやっと理解した俺に、若林は恨みがましく文句を言い始めた。
「一緒にNSC行くって」
「ちゃんと約束した訳じゃないでしょうよ」
「信じらんねえ、お前。ちょっとわかんねえわ」
「何がよ」
「何で言わなかったんだよ」
「別にいちいち、」
続きを言おうと若林に向き直る。
と、言葉に詰まった。
真っ直ぐ俺を見てくる目が、揺れていた。
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