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ぎし、
ベッドが沈む気配で目が覚めた。
カーテンの外は薄明かり。明け方か夕暮れか。
うつ伏せから少しだけ上半身を起こすと、シーツが寝汗を吸い込んで不快にべたついた。
「起こしてもうたな」
低い声に振り向くと、ボクサーパンツだけを身につけた状態の藤原が、ベッドの端に腰掛けてこちらを見ていた。
起き上がろうとする俺を制して、柔らかく頭に手を置く。
「まだ出るまで時間あるから、もうちょい寝とき」
「…ぁ」
ああ、夕方か。
そう言いたかったが、乾いた喉が張り付いて掠れた声しか出なかった。
ばさ、と仰向けになり天井を仰ぐ。
視界の端で藤原が水を差し出す。飲みたいのは山々だが手を伸ばすのも起きあがるのも面倒くさい。
藤原が、ふ、とため息のような笑いのような声を漏らして、ペットボトルの水を一気に煽った。
そして、仰向けの俺の上に覆い被さり、顎に添えた親指で俺の口をこじ開けた。
「…え」
「んーんん、ん」
「あ?、っ」
合わさった唇から、温くなった水が流れ込んでくる。
ごく、
ごくん、
飲み下せなくて口の端から溢れた水を、藤原が手のひらで覆うように拭う。
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