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見上げた藤原の顔は優しくて、口移しで触れた唇の感触に、妙に恥ずかしくなった。
キスなんて、もう何度もしたのに。
わざとぶっきらぼうに言う。
「ハズいことすんな」
「ハズないわ。起き上がんのもしんどいんやろ?俺の優しさー」
「…水ヌルい」
「しゃあないやろ」
ほい、とペットボトルを手渡される。水滴のついたボトルはひんやりして心地よかった。
だが、受け取るだけで全身にのしかかるような倦怠感を感じて、手にしたペットボトルを開けることも忘れため息をつく。
「しんどい?」
「…おん」
「ケツ?」
「ケツもやけど、全身…」
ぐったりとしている俺の隣に移動して、藤原が俺の首の後ろを揉むように撫でる。
「ヤりすぎたな。サルかっちゅう話」
「…誰のせいやねん」
軽く睨むと、「俺か」と屈託なく笑う藤原。
「なんぼほどヤったんかな。もうお互いおっさんやのに」
笑いながら部屋を見渡す。
床に、ベッドに、散らばるティッシュの山。
思春期のようなその光景に、思わず苦笑いする。
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