第1章:ようこそ、時間屋へ

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からん。 ちっぽけな鈴の音が、決して広いとは言い難い店内に響き渡る。 きょろきょろとあたりを見渡して入ってきたのは、制服姿の女の子だった。 見受けられる印象から、おそらく彼女は高校生なのだろう。 彼女は一通り店内を見渡して、ようやく私に気付いたようだ。 「あなた…誰?私、帰宅途中だったはずなのに…ここは?」 少々混乱した様子の彼女は、首を傾げながら私に問いかける。 毎回のようにされる質問。 まぁ、無理もないだろうと思い、近頃はこの問いをすんなり受け入れている自分がいる。 「ここは、ちょっと特殊なお店よ。私はこのお店の店主」 「…お店?」 「そう。ここは『時間屋』。そして、人は私をメルフィと呼ぶわ。アナタに…望む時間を与えましょう?」 私はいま、一体どんな顔をしているだろうか。 こうやって、私は人々を天国に地獄に、その歩む道を惑わせてきた。 その度に、後悔とも悲しみとも言えない感情が込み上げてくる。 答えの見えないこの感情は、なんとも寂しい。 彼女はそんな私の胸中など知る由もない。 ただただ、首を傾げたまま私の顔を凝視しているだけだ。
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