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だから私は諭す。
ここに来れたということは、彼女がここに導かれる存在であるからだ。
何かを抱えている。
時間に関係した、無垢でいて残酷な何かを。
「アナタがここに辿り着いた理由があるはずよ。ここに来なければいけなかった理由が」
彼女は私の瞳を見据えたまま、生きていることを忘れたように動かない。
その姿は、まさに静物画のごとく。
どうも、いまいち状況を呑み込めていないようだ。
「さぁ、言ってごらんなさい。アナタが欲しい時間は…どれかしら?」
「私が欲しい、時間…?」
ようやく反応した彼女は、か細く甘い声で呟いて、次の瞬間には顔をほころばせる。
「…私、夢があるの」
彼女は言った。
楽しそうに語る彼女の顔には幼さが垣間見える。
「この世界には残酷なことしかないでしょ?時間に縛られて、過去も未来もあやふやで」
「ふふっ」と可愛らしく微笑む彼女。
いまはその仕草すらも、狂気に満ちたゆえの行動にしか思えない。
「…だから、時間の中を自由に生きてみたいの」
これまた凄い願望を持った子がやってきた、というのが第一印象。
外見がおとなしめだったから、たわいもない小さな願いかと思いきや…まさかの大胆発言に驚かされた。
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