第1章:ようこそ、時間屋へ

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だから私は諭す。 ここに来れたということは、彼女がここに導かれる存在であるからだ。 何かを抱えている。 時間に関係した、無垢でいて残酷な何かを。 「アナタがここに辿り着いた理由があるはずよ。ここに来なければいけなかった理由が」 彼女は私の瞳を見据えたまま、生きていることを忘れたように動かない。 その姿は、まさに静物画のごとく。 どうも、いまいち状況を呑み込めていないようだ。 「さぁ、言ってごらんなさい。アナタが欲しい時間は…どれかしら?」 「私が欲しい、時間…?」 ようやく反応した彼女は、か細く甘い声で呟いて、次の瞬間には顔をほころばせる。 「…私、夢があるの」 彼女は言った。 楽しそうに語る彼女の顔には幼さが垣間見える。 「この世界には残酷なことしかないでしょ?時間に縛られて、過去も未来もあやふやで」 「ふふっ」と可愛らしく微笑む彼女。 いまはその仕草すらも、狂気に満ちたゆえの行動にしか思えない。 「…だから、時間の中を自由に生きてみたいの」 これまた凄い願望を持った子がやってきた、というのが第一印象。 外見がおとなしめだったから、たわいもない小さな願いかと思いきや…まさかの大胆発言に驚かされた。
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