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「えぇ。でも代償はとても大きいわよ?望みに見合う代償を捧げなければいけない」
「なんでもあげる。夢が叶うなら…代償なんて惜しくないよ」
彼女の眼を見据える。
眩しい輝きに満ちた瞳。
人は欲望に身を委ねれば、どこまでも際限なく堕ちていく。
それは私がよく知っている。
この子はそれを望むのかと…私は落胆するしかなかった。
彼女の答えは、もう揺るがない。
「…先に言っておくけれど、代償としてアナタが何を失うかは、その時になってみないとわからない。…それでもアナタは望むのかしら?」
次に言う言葉は、もう痛いほどわかっている。
「それでも、かまわない。夢の…ため…!!」
ほら、言ってしまった。
悪魔の誘惑に負けてしまった可哀想な子。
代償がどれほど大きなものなのか、確実に理解しきれていない。
私はひっそりと溜め息を吐く。
でも、私は時間屋の店主…お客様のご希望通りにことを運ぶのが、私の意味。
「なら、契約を始めましょうか」
私は首からさげていた鍵に手をやり、それを通していたチェーンごと引き千切った。
力に耐えきれなかったチェーンが、この場の空気に似合わない軽い音をたてて床に広がる。
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