第1章:ようこそ、時間屋へ

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私はというと、眼を閉じて手中におさまった黒い鍵に集中する。 彼女の視線を感じるが気にしない。 きらりと瞬いた刹那、その鍵は私の背丈ほどの大きさへと姿を変えていく。 視界の端に映った彼女は、さして気にした様子ではないようだ。 欲望がまさって状況の変化に無頓着にでもなったのだろうか。 「さてと…少しじっとしていてちょうだいね」 彼女の反応なんか見ないで、私は彼女を貫いた。 正確に言うならば、身の丈ほどになった鍵の先を、彼女の中心に突き刺した。 だからといって血なんか吹き出しやしないし、まして命に関係するわけでもない。 鍵と彼女の身体が同化した…そんなところで解釈すれば問題ない話だ。 彼女の身体の中に入り込んだ鍵の先端は、眩く光を散らし、突風があたりを包んでいく。 それと同時に店内を一面の光へと誘う。 …契約成立。 呆けた顔をしている彼女。 私は彼女からゆっくりと鍵を引き抜き、今度はその先端を空(くう)に差し出した。 巨大化した漆黒の鍵を、普通に鍵を開けるかのように右へと回転。 かちゃり。 何処からか聞こえた解錠の音を合図に、何もない空間から扉が現れる。
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