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私はというと、眼を閉じて手中におさまった黒い鍵に集中する。
彼女の視線を感じるが気にしない。
きらりと瞬いた刹那、その鍵は私の背丈ほどの大きさへと姿を変えていく。
視界の端に映った彼女は、さして気にした様子ではないようだ。
欲望がまさって状況の変化に無頓着にでもなったのだろうか。
「さてと…少しじっとしていてちょうだいね」
彼女の反応なんか見ないで、私は彼女を貫いた。
正確に言うならば、身の丈ほどになった鍵の先を、彼女の中心に突き刺した。
だからといって血なんか吹き出しやしないし、まして命に関係するわけでもない。
鍵と彼女の身体が同化した…そんなところで解釈すれば問題ない話だ。
彼女の身体の中に入り込んだ鍵の先端は、眩く光を散らし、突風があたりを包んでいく。
それと同時に店内を一面の光へと誘う。
…契約成立。
呆けた顔をしている彼女。
私は彼女からゆっくりと鍵を引き抜き、今度はその先端を空(くう)に差し出した。
巨大化した漆黒の鍵を、普通に鍵を開けるかのように右へと回転。
かちゃり。
何処からか聞こえた解錠の音を合図に、何もない空間から扉が現れる。
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