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今から一年前のこと
俺こと大林黒羽は空を見ていた
望遠鏡などは使わず、ただ肉眼で
その目に映る空は、濁っていた
曇り空
もうじきに雨が降るだろう。
でも今日は傘を忘れてしまった。
俺は視線を空から彼女へと移す。
『いい加減用事は済みましたか~って…私の話聞いてる?』
と言ってきたのは彼女こと
橘美沙だった。
「すまん、聞いてなかった」
実は話を聞いていたが
聞いていないと演じるほうが面白そうだと思ったのであった。
「今度、美沙の誕生日だろ。そのプレゼントを何にするか考えていたんだ。」
『なわけないでしょ。大体あんたがそんな先のことを深く考える訳ないでしょ。
去年の誕生日プレゼントだって、あんたが即興で選んで買ってきた物だったんだから』
女という生き物の第六感の高さには尊敬するに値するとつくづく思う。
「まあそれは置いといて、用事なんだが…特に何も無いな。」
『…(怒)』
本当である
何故自分はここにきたのかは分からない
でも自分の中の何かが、この雲の上から引き寄せられたのだ…そして目を閉じた。
…
次の日美沙は交通事故で死んだ。
俺は傘を…忘れてたのだ…
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