眼鏡のアリス

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 彼女はなにやら書類をパラパラとめくっていたが、突然ポツリと呟いた。 「暑いな、おい」  その呟きに詩六と葵が顔を向ける。 「確か今は春だったよな?それなのに暑いってどういうことだ?おい。地球温暖化か?地球温暖化のせいなのか?」 「いや、地球温暖化のせいというのは間違いでしょう。元はといえば人が原因ですし、人間のせいとでも言った方が正しいでしょう」  ニコニコと笑みを浮かべて答えたのは、詩六だ。  その爽やかな笑顔を、眼鏡のレンズ越しにジロリと見やってからアリスは頷いた。 「あぁ、そうかそうか。お前のせいだったか、詩六。お前は腹黒いからな。腹を開いたら実際に黒いんじゃないか?つか、血も黒そうだな。ま、とにかく腹黒は世界を壊すんだ」 「違います。壊すのではなく、破壊するんです」 「あぁ、そうだったな」 「うえぇっ!?」  会話の成り行きを見守っていた葵が、思わずといった感じで叫ぶ。慌てて口を押さえたが、もう遅い。  しっかりと葵の声を聞いたアリスが先程と同じように葵を見やり、詩六はニコニコ笑顔のまま振り向いた。 「なんだ居たのか、葵」「居たんだ。葵先輩」 「居たよ!!最初からいたからね!?」  ウルウルと涙目になりながら、必死に存在を主張する葵。  その反応にアリスは密かにニヤリと笑う。 「それは気づかんかったな。お前はどうだ?詩六」 「全く気づきませんでした。ほら、葵先輩はアレですから」 「あぁ、アレだからな」 「アレって何ぃ~~!?」  必死の叫びも2人の心に届かない。  あぁ、もう駄目かも…。  
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