No.4 深淵と悲劇

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少年は震える手で少女が差し出したクッキーをつかむ 少女がゆっくりと手を離すと、少年はそれを自分の顔に近づけた 少女は少年の様子をにっこりしたまま見ていた やがて少年はそのクッキーを小さくかじった それはよく味わう暇もなく喉を通り過ぎる 少年の瞳に光るものが見えた 少年はクッキーをもう一口かじる 少年の目から少し、涙がこぼれた 少女が首を傾げて少年を見ている その顔は笑ったまま 少年は残りを口に押し込んだ 少年の目からは溢れんばかりの涙 少年はもう、涙を抑えることも隠すこともできなかった 少女は驚いて少年に駆け寄った 少年の背に手をあて、さすりながら言う 「どうしたの?あ、まずかった?ごめんなさい!私が作ったの!」 少女が謝ると、少年は首を横に振る 少女は不思議そうに首を傾げた 「じゃあどうしたの?」 少年は何も言えなかった ただ、泣いていた ずいぶん感じたことのない、人の優しさ それに触れたことで、少年の胸は嬉しさでいっぱいだった
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