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少年は震える手で少女が差し出したクッキーをつかむ
少女がゆっくりと手を離すと、少年はそれを自分の顔に近づけた
少女は少年の様子をにっこりしたまま見ていた
やがて少年はそのクッキーを小さくかじった
それはよく味わう暇もなく喉を通り過ぎる
少年の瞳に光るものが見えた
少年はクッキーをもう一口かじる
少年の目から少し、涙がこぼれた
少女が首を傾げて少年を見ている
その顔は笑ったまま
少年は残りを口に押し込んだ
少年の目からは溢れんばかりの涙
少年はもう、涙を抑えることも隠すこともできなかった
少女は驚いて少年に駆け寄った
少年の背に手をあて、さすりながら言う
「どうしたの?あ、まずかった?ごめんなさい!私が作ったの!」
少女が謝ると、少年は首を横に振る
少女は不思議そうに首を傾げた
「じゃあどうしたの?」
少年は何も言えなかった
ただ、泣いていた
ずいぶん感じたことのない、人の優しさ
それに触れたことで、少年の胸は嬉しさでいっぱいだった
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