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少年が少女の家に暮らすようになってから、半年――
もう少年は少女の家族にずいぶんと馴染んでいた
そんなある日のことだった
少年は近くの森に栗をとりに来ていた
この森に落ちている栗はとてもおいしかった
だから、いつも優しくしてくれる少女とその家族にあげようと思い、この日は大きめのかごを持ってきていた
栗を拾っては入れ、拾っては入れ……
やがてかごいっぱいの栗が集まると、少年はにこりと微笑んで帰りの道を歩き出した
町に着いた少年は、少女たちの喜ぶ顔を思い浮かべながら少女の家に向かう
もうずいぶん暗くなっていた
このときの少年には、町の様子をうかがうだけの余裕すらもなかった
だから、気づかなかったのだ
いつもとは違う、不穏な空気が漂っていることに
そして、誰ひとりとして外を出歩いていないということにすら――
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