夏の匂い。

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逡巡していると、不意に彼の視線が俺から外れて そのまま空を見上げた。 どうしたんだろう。 一緒になって見上げたら、頬に水滴が降ってきた。 雨? 嘘だろ、あんなに天気良かったのに。 通り雨か? 「おいで、」 声に目線を戻すと、上着を羽織った少年が犬を抱き上げ川の中をざぶざぶと歩いてくる。 「あんたも、こっち」 「え、」 「ひどく降るから、はやく」 渡りきったところで犬を降ろし、そのまま森の中に入っていくその背中を追った。 数分後、彼の予想は見事的中。豪雨となり降り注ぐ。 一層清涼感は増すけれど、ひんやりとした空気に長時間晒されるのは少し不安。彼のおかげで、ずぶ濡れになるのは免れたけど。 くしゅん、と小さなくしゃみが聞こえた。 あんな盛大に水浴びした後だもんな。 .
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