夏の匂い。

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「そんなに寂しいなら送ってやるよ。ここからだと帰り道わかりにくいだろうし。」 「え、じいちゃん家わかるの?」 「もちろん!ね?覚えてるよねー?」 膝の上に犬を抱きあげて同意を求めてる。 「なんつうか、不安……」 「ほんとに知ってるの!山裾まで俺らのテリトリーだもん。」 「相棒の縄張りでしょ?」 「俺らのだってば!」 「はいはい。」 むっとして口尖らせてる。そんな反応されるともっとからかいたくなるんだけど。 「もう知らねー!行こっ!」 「あっごめんって、置いてかないでよ」 笑いを堪えつつ、あとを追いかけて小さな小屋から外に出た。 まるで空気が洗われたみたいに清々しい。自然はいいよなー…日常の中でつい忘れてしまいがちな事を思い出す。 道なき道を身軽に、たまに躓きながら歩く彼の後ろ姿はなぜだかすぐに心に馴染んで安心感を与えてくれる。彼が話したように、小さい頃の俺はこんな風に後ろを付いて歩いたんだろうか。 「おーい、ほらこっち!」 「今度はなに?」 記憶に無い知らない道ではあるけれどなかなか楽しい。時折こちらを振り返っては、木や花の名前、野草や茸なんかについては食べられるかどうかを教えてくれる。…それって重要?なんか、ズレてる気がするけど。
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