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ギルベルト・バイルシュミットという男は本当によく話す男だ。多弁、とでも言えば良いのだろうか。とても死刑囚とは思えないようなこの男に、俺は現在進行形で振り回されている。
「でよー、…って聞いてるか?」
「…あぁ」
先程から数十分、同じような話題を繰り返しているギルベルトは、死刑囚だ。六年程前にギルベルトを含めた三人組が地方の銀行に押し入り、中に居た民間人を含める十五人を銃殺し、現金を奪って逃走。事件から約四ヶ月後にアジトを発見した刑事らにより逮捕されたのだった。
罪状、第一級殺人罪―求刑、死刑。
他の二人、フランシス・ボヌフォワとアントーニョ・フェルナンデス・カリエドは終身刑の判決が下された。
そして今日、2月25日。ギルベルト・バイルシュミットの死刑執行が言い渡された。死刑執行まで後4時間。俺を待つ家族もいねーよ、と言って死ぬ前の話し相手に選ばれたのが俺、ルートヴィッヒだ。
俺は、三年前からこの処刑所で死刑執行人を務めている。とは言っても執行人など名ばかりで、死刑囚の首にロープが通されたのを確認した後、足元の床を開くスイッチを押すだけという簡単なものだ。たった、たったそれだけの事だ。そう自分に言い聞かせて今まで何百人という死刑囚の最期を見てきた。
三年間、様々な死刑囚を見てきた。皆一様に口数も少なく、確実に迫る死に怯えて正気を失った者、絶望し口を開かない者、早く殺してくれと泣き叫ぶ者…様々だった。だが、この男…ギルベルトは違った。死刑まで残り4時間だというのに、まるで死刑などないかのように明るく話すのだ。
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