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リヒトの家は、同じ銀座にあった。
早い人はもう出勤してる時間。仮面を被りスーツを纏った戦士達と、果てしなくすれ違う。
彼らと軽く距離を保って歩きながら、今日出会ったばかりの私達は、これから…身体を重ねに向かう。
灰色の塊。
そんな風貌の現代風ビル。
リヒトはその前で立ち止まった。
「このビルの上。」
エントランスを抜け、入口で口を広げて待っていた5人位しか乗れなそうなエレベーターヘ、リヒトが先に乗り込んだ。
隣に並ぶのも何だからと…リヒトの斜め前に立つと
耳を掠めて、肩越しに伸びてきた、そのリングが二つはめられた長い指は、
甘くてスパイシーな香りで私を振り向かせておきながら、
少し乱暴に、最上階のボタンを押した。
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