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リヒトはうつ伏せになって、モロッコ製の真鍮のトレイがテーブルになったようなそれから、タバコを引き寄せた。
「……本気?、本気で身体売んの?」
あぁ、合格ってことは、そういう事なんだ、ってそもそもを思い出した。
「………うん、もう、引っ込みつかなそう。」
流されてみようと思ったのは、杏と出会ってから今現在のこの短時間が[運命の出来事]だと思ったから。
例え、常識から外れていても…夢を捕まえられそうなら…この手で掴んでしまいたい。
シュッ。
ライターの石が擦れる音がなんだか後頭部にヒリヒリ響く。
リヒトは、
もうブラウスに袖を通してしまった肘のあたりを掴んで、強引に引き寄せると、
「がんばれよ?[極上の接客]」
軽蔑を目で表すと、こうなるんだな…っていうような視線を私に浴びせながら、口の端だけで、ニッタリと笑った。
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