暗雲

5/10
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
「どうしたの?元気ないね。」 開口一番、そう聞いてきた亜由美に 颯ちゃんと電話してからの 自分の胸のうちを 一気に打ち明けた。 「不安だ、不安だ」と 心の中で爆発しそうな思いを 初めて声に出したら それだけで少し 心に新しいスペースが産まれた。 「颯一さんが浮気するなんて、 確かに考えにくいよね。 彼女じゃなくても 一瞬で見抜けそうだし。」 そう、彼は嘘なんて つける人ではない。 久々に会ったというのに、 亜由美には私の不安を 聞いてもらうだけの ディナーになったにも関わらず、 親身に聞いてくれたあと 別れ際に彼女はこう言った。 「でも、家族ぐるみの 付き合いしてたのに、 颯一さんは音沙汰ないし 澪は落ち込んじゃってるしじゃ、 おじさんもおばさんも 心配してるんじゃないの?」
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!