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手足を失った亜美は、動くことすら出来なくなっていた。
毎日毎日ゴミを食べ続け、拷問を受ける。
ー死にたい…
もうそれしか考えられなくなっていた。
他のことが、考えられない。
ー飼い主が、やってきた。
それを見て、絶望感に浸るペット。
そんなペットの気持ちを知らない飼い主は、無邪気な笑顔でペットの頭を撫でる。
窓の外を眺めると、暖かい太陽が顔を覗かせていた。空は一面雲もなく限りない青が広がっていた。そこに小さく飛行機が見え隠れする。
平和だった。
外の世界は平和だった。
そんな光景を見た亜美は、もうそれを同じ世界と考えられなかった。
気付くと、飼い主の手にカッターの刃が握られていた。
容赦なく切りつける。
全身に言葉に出来ない激痛が走る。
赤黒い血で固まっていた体に新たな赤い線がはいり、鮮血が溢れ出してくる。
何度も何度も切りつける。
傷口はざくろのようにぱっくりと割れ、もう原型を留めていなかった。
声を出すことも、逃げることも叶わなかった。
悲惨な体を見てみる。
ー開いた傷口から見える、自分の臓物。
ー飛び散る鮮血、肉片……
夢のようだった。
現実として受け入れることができなかった。
変わり果てていく自分。
引きずり出される内臓。
…死にたい……
ただただ、それだけを願っていた。
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