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俺は差し出された湯呑みを受けとる。
「ああ、ありがとな」
俺は熱々のお茶を夏の日差しを浴びながら一口飲む。
あっつ~い!
ん……?なんかデジャブだぞ。
「自己紹介が遅れたわね。私は『博麗霊夢』。ここで巫女をしてるわ」
「ああ、俺は〇〇(自分でも忘れかけていた俺の本名だ)。不本意ながらキョンで通ってる」
「そう。じゃあ、キョン」
“不本意ながら”って言っただろ。
「貴方、なぜここにいるのか分かる?」
「いいや、全く」
俺は大きくため息をつく。
「突然、大勢の男共に担がれて、どこともしれない秘境の森に住む裸族の群れのど真ん中に放り込まれたような気分だ」
そう言うと少女はニコリと笑む。
「それはそれは。さぞ私が服を着ていて安心したでしょう」
「ああ、ついでに言えば親切な人で安心した。閑話休題、それで俺はなぜ……博麗さんのお宅に?」
「あら、意外にませてるのね。霊夢で結構よ。話せば簡単な事、貴方が境内で倒れていて、ほっとくのもなんだから仕方なく私が介抱してあげただけの事」
霊夢はそう言ったきりズズ、とお茶を飲み、俺の返答を待つ。
「そうか。迷惑かけてすまなかったな、霊夢」
「ええまぁ、大丈夫。こういう事は慣れたつもりだから。今回は存外、厄介かもしれないけど」
「……?」
そうだ。閃いた。
「電話を貸してくれないか?家族に迎えに来てもらおう」
「外の利器ね。残念ながらここには無い。けど、霖之助さんのお店なら、運が良ければあるかもね」
電話が無いだって?どんだけ田舎なんだここは。
いや、それよりも話を掘り下げよう。
「その霖之助さんって人は?」
「森で外の世界から流れ着いたものを扱っているお店の店主よ」
「ま、待ってくれ。さっきから『外の世界』やら『幻想郷』だの、一体何の話だ?ゲームとか漫画か?」
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